男がベランダから侵入してきたので生まれて初めてマッポ呼んでみた!

用事でひさしぶりに吉祥寺へ来た。私は昔からこの街がそんなに好きじゃない。中央線沿線には幾度かの引越しを経てトータル6年くらい住んだ。ので吉祥寺には馴染みがあって然るべきなのだが、なんというか、みんながそれほどまでに吉祥寺を好きな理由が今だに分からないって感じ? 嫌いじゃないんですけどね。

さて今日ひさびさに吉祥寺駅前に立ってみて、ふと「初めて来た思い出があまり良いものでなかったために、私はこの街をそんなに好きじゃないのかもしれない」と思い当たった。私が初めて吉祥寺を訪れることになったいきさつは、私が初めて吉祥寺を訪れる数ヶ月前に遡る。

 

私が生まれ育った鳥取を離れて上京したのは19歳のときで、1つ下の妹と国分寺2LDKのマンションの2階に住んだ。このマンションは両親が選んだ。なぜ国分寺だったのかというと「閑静で静かな街だ」とどこかで聞きつけた両親が勝手に決めたのである。

結果的に、この国分寺というチョイスが大失敗だった。閑静すぎたのだ。バイト帰りの国分寺の閑静な夜道で、私はあらゆるタイプの変質者に遭遇した。東京で何度も引越しをしてきたけれど、あれほど危険な街を私は知らない。国分寺の人には申し訳ないが、事実だから仕方ない。今は違うかもしれないですけどね。

これから娘さんを東京に送り出そうという親御さんには「一番安全なのは繁華街だ」と伝えたい。

 

 

そんなこんなで早くも国分寺を嫌いになっていた上京1年目の夏、取り返しのつかない事件が起きた。いつものように自室でグッスリ眠っていた私は、謎の圧を感じて目を覚ました。すると……

 

 

男が私に覆い被さっていたのである!

 

 

このとき私は寝ぼけており、「あれ? コイツ彼氏的な何かだっけ……?」というようなことを思った。そして徐々に覚醒した私は自分に彼氏的なものがいないこと、目の前の男が知らんおっさんであることを理解した。

で、こっからがこの話の怖いとこなのだが……意識を取り戻した私は男を押しのけて立ち上がり、「テメー誰だよ! 出てけ! ブチ殺すぞ!」みたいなことを叫び散らかしたのである。男が凶器を持っていたら私の人生はあそこでジ・エンドだったかもしれない。なぜ私はあれほど強気に出たのか? 若いって怖い。

しかし幸いにも男は黙ってベランダへ向かったので、強気作戦は結果的に功を奏したといえる。ここでようやく、私は男かベランダから侵入してきたことを知った。この一件における私の唯一の落ち度は “窓を開けて寝ていた” こと。これはマジすみません。

男がおとなしく引き下がったことに気を良くした私は男を罵倒しつづけたが、私が「警察呼ぶぞ!」と口にした瞬間、男はクルリとこちらを振り返り「ああ呼べよ!!!!!!」と絶叫した。このタイミングで初めて「怖い」と思った。

男がヒラリとベランダから飛び降りたので驚いて階下に目をやると、真下にチャリ置き場があった。つまり彼は一旦チャリ置き場の屋根に登ったのち、ベランダへ飛び移ってきたらしい。2階かと思われた我が家は実質1階だったのである。いや怖すぎぃ。

 

そっから妹をたたき起こして人生初の110をダイヤル。10分くらいで警察の人が3人来た。2人が耳かきみたいな道具をパタパタして指紋を採取している。ドラマみたいだった。

その間、刑事らしき人が事情聴取をするのだが、私の通っていた学校やら家族構成、特にバイト先の業務内容についてめちゃめちゃ掘り下げてきたので驚いた。当時私はキャバクラでバイトしており、「ウチの店が違法営業をしていて逆に自分がショッピかれたらどうしよう」と不安になったが、刑事さんにウソつくわけにいかないので正直に色々喋った。今なら「それ事件に関係あります?」とか言うと思う。とにかく世の中のことを知らなかった。だって19歳だもん。

そうして最後に「◯月◯日◯時ごろ、歌舞伎町のキャバクラ◯◯の従業員、亀沢郁奈は……」と大声で調書を読み上げ始めたのには参ってしまった。横で妹が聞いてるんスけど、そのへんの配慮とかないんだろうか。

警察の人が帰ったあと、私と妹はグッスリ眠り、翌日は普通に学校へ行った。親には言わなかった。たぶん「鳥取に連れ戻されたらかなわん」と思ったんだと思う。今なら即座にどこかへ避難すると思うが、私と妹は翌日以降も普通にその家で過ごした。若さって鈍感さ。あっ、ちなみに強姦“未遂”ですのでご心配なく。

 

 

 

で、それから数週間後……

 

 

なんと警察から「犯人を逮捕しました」と連絡が!!!!

 

 

 

果たしてこの話が吉祥寺とどう関係してくるのか……? 次回「亀沢さん、マッポと弁護士に言いくるめられるの巻」お楽しみに!