モロッコ北の玄関口・タンジェへ到着してすぐ、声をかけてきたスペイン人と食事に行くことになった。私は普段あまりそういう行動に出るほうではないのだが、あの時はモロッコ人たちの異様な馴れ馴れしさに圧倒されていた。西洋人に対して「日本人に会ったかのような親近感」を抱いたのである。
ただし話を聞くと彼はタンジェ在住の現地人。私はあの時たまたま無傷で帰れたものの、結果的に彼は少しヤベェ奴であった。やはり見知らぬ外国人にホイホイついて行くべきではないのだが、かといって異国で見知らぬ外国人と一切関わらないのもそれはそれで面白くないのが難しいところ。
まずカフェでミントティーをご馳走に……なったと思ったら、後でキッチリ割り勘で請求された。このカフェは『カフェドパリ』といって有名な映画のロケ地にもなったらしい。
ランチも一緒にしようということになり、連れられたのが『Les anciens de Tanger』という店。彼いわく「観光客の奴ら(吐き捨てるような言い方)は絶対に来ない、本物の現地人が通う店」とのこと。いくつもの路地を抜けた先にあり、確かに普通に観光していたのでは辿り着けなさそうな場所だ。こういう体験はなかなかできるもんではない。
店先には串刺しの肉や……
ともかく新鮮そうな食材が色々と並べられている。勝手に色々と注文してくれる彼。ちなみに私の英語力は中学生に毛が生えた程度であり、ヨーロッパ人を相手にすると「意思の疎通はできるけど、雑談は厳しい」といったレベル。
しかしこの日は終始うまいこと会話が弾んだ。これは彼がなるべく簡単な英単語を選び、ゆっくりハキハキと発音してくれたおかげである。おそらくこういった場面に慣れている人なのだろう。
まず運ばれてきたのは豆のスープ。
それから豆のスープに……
豆のスープ。
「いやスープばっかりかい!」と彼に尋ねたところ、どうやらパンとか色々な食材にディップして食べるスタイルのようだ。モロッコではどの飲食店でも必ず最初にパンが出てくる。ハンバーグに茶色いスープを混ぜたらこの旅一番のヒットが誕生した。
焼き鳥(羊だったかもしれない)は豪快に串ごと。
イワシもおいしい。
正確には忘れてしまったが、会計はたしか2人で数百円程度とかなり安かった。ちなみにこちらもキッチリ割り勘で請求されたので、それがモロッコスタイルなのかもしれぬ。
タンジェの現地人が足しげく通う『Les anciens de Tanger』は中心部からほど近くに位置している。Googleマップで検索してみると現在もしっかり営業中のようだから、機会があったら行ってみてほしい。