映画のレビュー記事なんかを書いている友人が「最近、映画好き界隈は『全裸』の話題でもちきりッスよ〜」と言っていたのが2年前。「監督」を省略して『全裸』と称するあたりにガチっぽさを感じた私は、世間的に大流行する少し前にシーズン1を観た。大変面白かったので色んな人に勧めた。
先日公開されたシーズン2も一気に観た。それなりに面白かったが、人に勧めるかどうかは微妙だった。
何がダメだったのかというと(ダメではないが)、主人公である山田孝之演じる村西監督が「最初から最後まで何考えてるか分からなかった」、そして「悪い意味で魅力が感じられなかった」という点だ。これは何も監督が悪いことをしたからとか、ダサいオッサンになったとか、そういうことではない。むしろシーズン1では「ダメだからこそメチャクチャ魅力的な人物」であることが上手に描かれていた。
シーズン2は村西監督の転落物語だ。事業に失敗するわ仲間は裏切るわ命乞いはするわ……と、最初から最後までいいとこ無しのダメ男。でも、それは全然いい。そう描こうというのが本作の意図であるし、「愛すべきクズ」は歴史的にみても一定数存在している。
問題は、主要キャラの黒木香やトシその他大勢が「そんなダメ男を命がけで守ろうとする」という点。その理由について作中では「村西監督の魅力に取り憑かれてしまったから」というふうに説明されているのだが……その肝心の「魅力」が全然伝わってこないのである。
シーズン1の村西監督であれば、命がけで守るのもうなずける。しかしシーズン2の監督には、「愛すべき」ポイントが見当たらない。つまり、黒木香さんやトシはシーズン1の思い出だけを引きずってシーズン2で命をかけたことになる。
まぁ、ほとんどの人はシーズン1から観ているだろうから、”前半で全ての徳を積んだ男”と捉えられなくもないが……せめてシーズン2にも、ほんの一瞬でいいから“監督の本心”が感じ取れるシーンが欲しかった。「本当は仲間のことを想ってるんだな」とか「本当は新作を撮りたいんだろうな」とかさ……。
ちなみに私は一応ライターを職業にしている身だが、“内容は良いのにな〜んか読みづらい記事”を書いてしまうことがある。これは構成とか演出といったすごく微妙な問題であり、実際に書き終えてみるまで分からない部分が大きい。
シーズン2は台本も展開も全然悪くなかった。ただ実際に8時間ぶっ通しで見ると……少しだけ、足りないシーンと余計なシーンがあった、ということのような気がする。作品を作るのって本当に難しいですよね。
シーズン2では「また『SMっぽいの好き』みたいな作品を撮ってよ」と言われた村西監督が、「あんなもん狙って撮れるワケないだろ!」と激昂するシーンがある。今になってみると『全裸監督シーズン1』は、まさに『SMっぽいの好き』だったのではないか。あれぞ狙わずして撮った奇跡の作品……なのかもしれない。
……などと期待値が高すぎたために辛口なことを言ってしまったが、シーズン2も面白いので絶対に観るべきではあります!