ヨーロッパの洗礼にくじけそうになるも…よく見れば大阪メトロと同じなんじゃないの

バンコクから14時間のフライト。経由地のデュッセルドルフ(ドイツ)に到着した時は本当に泣きそうだった。機内14時間で食べ物の提供は一切なし。飲み物はかろうじて水が1杯だけ。格安チケットだから仕方ないけれど、わたしは金を払えばなんとかなると思っていたのである。

激安海外1人旅をするようになって数年。特に最近は中国や東南アジアを軸とした東アジア圏ばかりめぐり、少しばかり海外に慣れたつもりでいたのが大きな誤算だったようだ。アジアのLCC機内にはカタログが置いてあり、酒やら軽食にスナック、ブランケットまでもその場で金を払えば乗務員が運んできてくれるところが多い。

しかし今回のヨーロッパLCCは、事前に予約していなければ一切の提供はアリマセンよというシステムだった模様。これは決してこのシステムが悪いというのではなく、わたしが無知だったという話だ。乗務員の数が少なかったし、そのぶん運賃を下げてくれているのだろう。いい勉強になった。次回から長距離フライトの際は最低でも水は持ち込もうと思う。ただ欲をいえば、なにも14時間のときに勉強がこなくてもよかったのにな……。

デュッセルドルフでは機体を降りてから空港までかなり長い距離を徒歩で移動。これも初めての体験である。自分はこれから無事ヨーロッパで数ヶ月過ごせるのだろうかと不安がよぎった。

デュッセルドルフ空港からウイーンまで乗り継ぎ時間はわずかである。いつだか北京から成田へ向かう飛行機に乗っていたわたしは中継地の上海で間違えて空港外へ出てしまい、チケットをおシャカにするという悲劇に見舞われた。あの悲劇がなんとなくまた起きそうな雰囲気が漂う空港であったため、用心深く周りを見渡していたわたしに思わぬサプライズ!「日本人ですか」と女の子に話しかけられたのだ。

きけば彼女もわたしと同様の悲劇を体験したことがあり、「ああなりそうな感じがしません?」とのこと。経験は財産なり。

「あずさちゃん」はわたしと全く同じ“バンコク→デュッセルドルフ→ウイーン”のルートを辿る京都の1人旅女子。この飛行機に乗っていた日本人は我々2人だけだ。とんでもない幸運もあったものである。この空港にはビックリするくらい職員がおらず、2人がかりで何とか用務員のおじさんをつかまえ行くべき方向へ導いてもらう。1人だったらもしかすると無理だったかもしれないくらいの高難易度であった。

わずかな乗り継ぎ時間で丸1日ぶりの食事だ。よく冷えたカチカチのパニーニが9ユーロ。

ユーロといえば、単純に為替レートで計算すると1ユーロは約120円である。てことは1万円=約83ユーロ。ヨーロッパはカード社会ときくけれど、さすがに少しは現金がないと心もとない。多少手数料が高くてもいたしかたない……と、到着したウイーンの空港でわたしは窓口に2万円を滑り込ませた。すると戻ってきたのは約100ユーロ。

え?空港の両替所がこんなに露骨にゴマかすの?

そう思って電光掲示板をよく見ると……ゴマかしているのではなく、交換率が本当に1ユーロ=約200円なのだ。そう、ユーロは異様に「買い」が高いのである。調査の結果どうしても現地で現金がほしい場合は、クレジットカードのキャッシング機能を使うのが一番経済的であるようだ。アジア旅行のしすぎで「現地の銀行が一番おトク教」の信者と化していたわたしにとっては声も出ないほどの衝撃。

しかしそれよりも何よりも、ユーロは「日本国内であらかじめ交換しておく」のが一番安かったのだというからカルチャーショックにもほどがある。バカ丸出しで多額の日本円を握りしめてきたわたしは、それをそのまま日本へ持ち帰ることになりそうだ。全てわたしの準備不足。これも勉強。高すぎる授業料。なにも3ヶ月旅行のときにこなくてもよかったのにな……!

電車の乗り方も相当苦労した。日本と外国で違うのは当たり前だが、アジア諸国は何となく通じるものがあるので初めての国でも乗れてしまったりするのだ。その点ヨーロッパは別システム。バスも分からない。

その他にも買い物システムや……

どこに何が売っているか状況に……

放し飼い事情やら……

ゴミ捨て事情など。

ともかくどこから記せばいいか分からないほど、ヨーロッパとアジアは暮らしのシステムが違う。アメリカにすこし住んだこともあるがあっちとは段違いだ。

しかし、である。これを書いている現在ヨーロッパ上陸3週間目で3カ国目だが、かなり慣れた。国を移るごとに言葉も文化もシステムも違う。だけど何というか、ノリが似ているんだよな。

相変わらず電車の乗り方はサッパリ分からない。まず改札がない。どこにも行き先が書いてない。切符が売っていないこともある。どうすればいいのか?

誰かに聞けばいいのである。とにかく聞けばいいことだけはよく分かった。

アジアでも同じと思われそうだが、逆にあっちはシステムがしっかりしているために人が誰もいなかったり、一般人に聞いてもらちがあかなかったりすることが多いように思う。対してヨーロッパは、なんか雑だ。「なんか雑になっちゃいましたけど、まぁ分かんなかったら聞いてよ」ってなノリである。それって大きな違いだ。

自分は「大阪メトロが苦手」を公言していたと思い出す。近鉄、南海、地下鉄、JR ……同じ難波なのになんでこんなに駅離れてるの?おまけに「なんば」表記もあるとかいい加減にしてほしいと思っていた。しかし大阪人にそれを言うと「東京のほうが難しい」との答え。

そう言われて自分が上京した当時を思い返してみると、そういえば「東京駅と有楽町と新橋と大手町が全部徒歩圏内であること」にブチ切れたことがあったんだった。「せめて近そうな駅名にしろ」と思ったんだっけな。

要は慣れである。難波から梅田へ行くには戸惑うけれど、関東圏内なら目をつぶっても宇都宮くらい行ける気がするものな。アジアとヨーロッパだって、きっとそういうことなのだろう。